カテゴリ:ある日の読書( 84 )

ある日の読書『千の扉』

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千の扉   柴崎友香


新宿の街の中にある広大な都営団地。
老朽化、高齢化した団地は、何千の人が住むというのに、
人の気配を消したように静かだ。
「千の扉」は、その団地の重い鉄の扉。



千歳は、たいして親しくもない一俊にプロポーズされ、
広大な都営団地の一室に住むことになった。
その部屋で、一人暮らしをしていた一俊の祖父から、
千歳は人捜しを頼まれる。

のらりくらりの千歳の人捜しは、いろいろな人の人生をかすりながら、
往きつくところに往きついたのだった。



自分が日々思ってることは、取るに足らないことで、
他人に話すまででないことがほとんどだ。

実は、その取るに足らないことが、自分の心の核の部分だったりする。

この小説の登場人物は、おしなべて皆そうである。

家族だから友人だから、何もかも洗いざらい話すものとは限らない。
だからこそ、あえて話さないという場合もあるのだ。

この小説に出てくる、自分表現がヘタな、ちょっと可笑しく悲しい人たちの、
心情がとてもよくわかる。

わたしもそうだから。



好き嫌いのふり幅が、かなり大きな小説と思う。

70年という歳月の時間軸が、あっちこっちと飛んでるので、
内容がつかめるまで手こずったりもする。

でも、わたしはかなり「好き」なほうに入る小説です。

主人公千歳の、のらりくらりの具合が好ましくて、
途切れ途切れの話が繋がっていく後半は、もう好き過ぎるくらい。



柴崎友香さん、ググってみると2014年の芥川賞を取られていた。

俄然、このかたの小説を読みたくなったものよ。!(^^)!







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by ukico32744 | 2018-02-15 22:15 | ある日の読書 | Trackback | Comments(12)

ある日の読書『こういう旅はもう二度としないだろう』

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こういう旅はもう二度としないだろう  銀色夏生


フォトエッセイですが、タイトルの通りです。

心境そのままに、ダイレクトなタイトルをぶっつけたものと思いました。

30年来の銀色ファンであるワタシには、小笑いしながら読める、コアな一冊なのですが、
ステキな旅行回想記を期待したかたには、申し訳ないくらいの素っ気なさです。
(タイトルがアレですから、期待値も大きくないっか~ )



子育てもほぼ終わり、好きだった旅行にも行くゆとりが出来、
手始めに、おひとりさまツアーに、立て続けに参加した銀色さん。

半年間に、ベトナム、ニュージーランド、スリランカ、インド、イタリア。

秘境目的やスピリチュアルツアーなど、旅の上級者向きなコースが多いような。。(^^;

これって、手始めの枠を超えてると思う。

銀色さんって、”ほどほど”とか”人並み”ということを知らない人です(笑)



ツアー中、

まだ楽しくならない。
 楽しいかわからない。
楽しいことはひとつもなかった。
むしろ寂しい。

そんなことをつぶやきながらも、旅を消化していく。

時々、一体どういう理由でここを選んだかも、わからなくなったり。。💦

人への観察力が鋭い分、旅慣れしたつわものども(同行したツアー客)にも翻弄されて、
感情がクタクタになったりする場面などは、
小さくまとまったロードムービー風で、ワタシには、凄くツボ。

風景や食べ物を堪能するだけが旅に非ず。

特にツアーの場合は、一期一会の旅であったりするので、
こういう旅はしたくてもできないだろう。。という意味を含めての
「こういう旅はもう二度としないだろう」なのでした。





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写真の小さな切り取りが、パッチワークワークのようで可愛い。

たくさんの小さな写真の数々。
ひとつひとつに小さなコメントが…淡々と…


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風光明美な絶景、偉大な世界遺産などの語り口を期待するかたには、
決してオススメできません (笑)











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by ukico32744 | 2018-02-07 19:05 | ある日の読書 | Trackback | Comments(27)

ある日の読書『海の翼』

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海の翼 -トルコ軍艦エルトゥールル号救難秘録ー   秋月達郎


トルコは親日家が多いことで、知られてるようです。

日本人の美徳や価値観が、とても共感してもらってるせいでしょうか。


1890年、日本の紀州沖で台風に巻き込まれ、遭難したトルコ軍艦エルトゥールル号の船員を、
貧しい漁村の人々が、命がけで救助したという実話があるのですが、
トルコでは、100以上年経った今でも、
このお話が教科書に載っていたり、親から子へ語り継がれてるそう。

日本に何かあったら、恩返しを。。
そんなことまで、語り継いでいるトルコの人には、
日本人以上の「まごころ」の美徳を感じます。

そして、100年の時を経て、恩返しを受けた事実。

イラン・イラク戦争時に、イランに取り残されそうになった在留日本人を、
自国の危機も省みず救援に動いたという、国を挙げての恩返し。

ワタシたち日本人は、この本が書かれるまで、このことを知りませんでした。



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海難1890 

2015年に日本・トルコ親交125年を記念し、両国合作で映画にもなりました。

ワタシは観てないけれど(^^;





横浜の友人B君が、こちらへ出張に来た際に、「とても感動したから」と、わざわざ持ってきてくれた、
この本。

あれは9月?10月?だったか。。

鎌倉検定が終わったら早速!と言ったような気がするけれど、遅くなりました。

いいことやイイ話、自分の中だけには留まらず、
いろんな人にバトンを渡して、輪を広げる人だったわ。

若い時とちっとも変ってないよねーと思う。

ワタシがあまり持ち合わせいない部分。

友人の、いつまでも変わらぬ、その美徳が眩しいな~。


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by ukico32744 | 2018-02-04 17:20 | ある日の読書 | Trackback | Comments(26)

ある日の読書『鳥獣戯画』

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鳥獣戯画  磯﨑憲一郎


時々内容が理解できずに、迷路に迷い込んだようになって、
もう読むの止めちゃおうか、という作品に遭遇します。

この小説がそう。

途中、何度も放り投げたくなりましたが、なんとか最後まで読み終えました。

読む側の力量不足で、消化不良💦

放り出さず読み終えたことだけに、バンザーイ!です。




題名の「鳥獣戯画」は、京都高山寺に伝わる国宝絵巻です。

「鳥獣戯画」は、甲乙丙丁という4つの巻があって、巻によって、絵のタッチや内容が変わるようです。

ワタシ達がよく見る擬人化したウサギやカエルの絵は、甲の巻のものなのですって。

著者が、この「鳥獣戯画」の絵巻のように、全然違う話を繋げて、
一つの小説として成り立たせたいという野心を持って、書き上げたという小説「鳥獣戯画」。

ワタシが太刀打ちできないというのも、お判りでしょう?(笑)





「わたし」という小説家が登場し、自伝小説らしい、というのはすぐ解りましたが、
突然、京都の高山寺を再興した鎌倉時代の僧、明恵上人(みょうえしょうにん)の話にすり替わったりもします。

確かに時代背景も登場人物も、まったく脈絡のない話を繋げています。



この難解な小説の中、明恵上人ストーリーの部分は興味深く読めました。

鎌倉にゆかりがある人が、登場するのです。

明恵上人は京都高雄の神護寺で、修行を始めますが、そこで師匠ともなる文覚(もんがく)に出合い、
良くも悪くも、非常に影響を受けることになります。

怪僧とも云われた文覚は、実は武士の出身で、人妻を好きになったが、誤って、その人妻を殺めてしまう。
その罪滅ぼしに出家したという人。
(今でいうなら、殺人罪。出家というより刑務所行きですよねー)

その怪僧文覚上人は、京都でひと騒ぎを起こし、法王の逆鱗に触れ、伊豆に流されますが、
そこで、同じく伊豆へ流されていた源頼朝と出会い、
平家討伐の兵を挙げるよう進言したといいます。
(この辺りの件は鎌倉検定テキストブックにも書かれてあることです)

文覚は鎌倉にもお寺を興してますし、屋敷跡の碑もありますし、
鎌倉にはとても縁がある僧です。
あじさいでお馴染みの成就院には、文覚上人荒行像がありますしね。

文覚は鎌倉検定問題にも度々登場する人物なのですが、
この小説の中で文覚に出合うとは、思いもよらず。。

知っているということは、それだけで、何倍か面白くさせてくれるものですね。

鎌倉検定で得た知識が、ここで、少しだけ活かされました。!(^^)!





時々、身の丈以上の、ハードル高いものをチョイスしてしまいます。

今回は「鳥獣戯画」という題名に、ただただ惹かれて選んだ一冊なのでした。(^^;









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by ukico32744 | 2018-01-25 16:51 | ある日の読書 | Trackback

ある日の読書『いのちの車窓から』

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いのちの車窓から 星野 源


星野源くんのエッセー「いのちの車窓から」は、去年読んだ「そして生活はつづく」を
上書きしたような、バージョンアップ感を感じます。

文章が格段に、上手くなってるぅ。。と思うのは
ワタシだけでしょうか。

源くんなりの、下積みの時代があったようなのだけど、
ワタシの目には、瞬く間に、マルチなアーティストとして、
世間に認知されて、存在感大いに発揮したという印象がある彼。

そして、大きな病気を克服して、
さらにバージョンアップして、見事に復活。
ファンの喝采を浴びた彼。

今や時の人。

源くんを中心とした、いくつかのプロジェクトが同時進行し、
常にスポットライトの中心にいる彼。

シンガー、俳優、文筆業と怒涛の毎日を過ごしながら、
書くことによって、平静を取り戻し、日常のバランスをとる感覚が
彼の中にあるのでしょうか。





星野源のマルチな才能が、枯渇しませんように。。(^^;
(小室さん、引退会見でそんなこと、言ってたから~)






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by ukico32744 | 2018-01-19 22:07 | ある日の読書 | Trackback | Comments(18)

ある日の読書『真夏の雷管 道警・大通警察署』

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真夏の雷管 -道警・大通警察署ー  佐々木譲


ワタシの読書遍歴、統一性がなくて、あちこち色んな小説に手を出してますが、
大きくくくると、エンターテインメントな小説好きです。

佐々木譲さんの、道警シリーズものも大好きです。



道警シリーズの8作目「真夏の雷管」は、JR北海道の不祥事絡みの事件で、
実際いくつもの不祥事をやらかしているJR北海道には、
耳が痛くなるほどの、リアリティっぽさが有り余るストーリー。

道警の中では「厄介者」扱いされてるけれど、
際どい難事件を解決していくので、昇進はしないけれど左遷もされない、
主人公 佐伯宏一警部補。

そして、佐伯さんの肩腕ともなる3名の刑事。
みなキャラが立つ、魅力的な人物像。
8作目ともなれば、それぞれ刑事としての成長ぶりも見逃せないところです。

今回JRを使っての事件なので、スピード感、緊張感が有り余る~。

ワタシが月に何回も乗ってる「千歳線」が、事件に関わってくるので、
その超臨場感にも、有り余るワタシなのでした。





↑↑で「有り余る」を連発してますが、新年初ラジオで聴こえてきた曲が
ゲスの極み乙女の「ロマンスがありあまる」だったの。

あのボーカルの人とBッキーとのあの件は、去年だったか?おととしか?

年が明けて「禊」(みそぎ)も済んだし、みんな、もうすっかり忘れたよね!?
という、わかりやすい登場の仕方ね。(笑)

そうそう、忘れたわよ~。だって、
ワタシにはどうでもいいことだもの。

でも「ありあまる」の曲は、忘れてないわ。

世の中、才能あったもん勝ちよねー。












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by ukico32744 | 2018-01-13 17:53 | ある日の読書 | Trackback | Comments(14)

ある日の読書『キラキラ共和国』

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キラキラ共和国✨  小川糸


ツバキ文具店のポッポちゃんが、モリカゲさんと結婚した。

鎌倉は春。
QPちゃんは小学生になった。

炊き立てのごはんのような、いい匂いがしてきそうな家族物語が始まった。

そう、ポッポちゃんって、いきいきとした優しさが匂い立つような人ね。

代書屋さんの主としても、きれいにきちんと心を寄せて、真正面に向き合う姿、美しいです。





ポッポちゃんが愛して止まない鎌倉は、ワタシが好きな鎌倉そのもの。

小川糸さんが、ポッポちゃんの目を通して、鎌倉の四季を、
息づかいまでも鮮やかに表現してくださっているところに、
ワタシはため息をつくほど感嘆し、手を叩きたくなるほど共感するんです。


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写真、ちょっとボケちゃったけど、素描家しゅんしゅんさんの鎌倉案内図、
可愛いし、味わいがあります。
(表紙、裏表紙もしゅんしゅんさんのもの)

ポッポちゃんの行動範囲は、ワタシの鎌倉テリトリーでもあり、
距離感、空気感も手に取るように伝わってくる。

鎌倉、疑似体験できるのも、この小説に心酔する理由のひとつ。



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紙飛行機のお手紙。

新茶。

タイプライター。

そしてツバキ。


どれも、キラキラなストーリーの一コマ。



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by ukico32744 | 2018-01-11 19:55 | ある日の読書 | Trackback | Comments(16)

ある日の読書『星がひとつほしいとの祈り』

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星がひとつほしいとの祈り  原田マハ





明けましておめでとうございます

おせちが残り少なくなるにつれて、お正月気分も徐々に抜けていきますね。

今日あたりから、日常モードになったかたも多いことでしょう。

ワタシも今日はお酒を飲まずに、この時間でも、シャキッとしてしています(笑)




「星がひとつほしいとの祈り」は、図書館の原田マハさんコーナーの背表紙を見て、
タイトル惚れして、取った一冊でした。

短編集なので、年末の気忙しい最中にも、ちょっとした気分転換や、夜寝る前の少しの間にと、
サクッと読めて、良かったです。

ストーリー的には、「サクッ」な感じより、やや重め。
だけど、深堀りしないとこが短編のいいところ。

星がひとつ、キラッと光るぐらいの明るさが射して、
ちょうど良い具合に終わります。





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雪だるまがひとつほしいと思う図書館帰り。(笑)





今年もよろしくお願いします


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by ukico32744 | 2018-01-04 21:43 | ある日の読書 | Trackback | Comments(26)

ある日の読書『ジャッカ・ドフニ』

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ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語   津島佑子


北海道新聞日曜版の「本と旅する」という特集記事、毎回楽しみにしています。

12月10日(日)は、長崎県五島列島の隠れキリシタン洞窟を訪ねる旅。
その旅のおともとなる本は「ジャッカ・ドフニ」。

潜伏キリシタンの物語です。

あっ、読みたい!と思い、図書館検索したらば、ありました。
すぐ読めて、ラッキー♪




蝦夷地でアイヌの母と日本人の間に生まれ、幼くして孤児となったチカは、
信仰厚い両親から、宣教師になるべく送り出された津軽の少年ジュリアンと、
長崎、平戸を経て、マカオを目指す果てしない旅に出る。

苛酷な命がけの船旅の連続であるけれど、
二人は、ジュリアンの壮大な志を支持する、隠れキリシタンの人々に大切に守られ
隠密の旅は進んでいく。

旅の最中、チカの信仰心も深くなっていくのだけれど、
何故か、幼いころに閉じてしまった、アイヌの言葉が蘇り、
アイヌの歌を歌い、ジュリアンの心を癒す。

とうとうマカオに着いた時には、津軽を発つ時、5才だったチカは9才になり、
4年近くの歳月が過ぎていた。





この物語、現代のある女性の物語と交差しながら、進んでいくのですが、
そういうところが、ちょっと物語を気難しくしてるかもしれないです。

チカとジュリアンの物語だけでも、充分に読み応えがあるストーリー。
久しぶりに大作を読んじゃったぁ…の、充実感がありました。

作者は、作家太宰治の次女の津島佑子さん。
去年68才で亡くなられ、これが遺作になるそうです。






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by ukico32744 | 2017-12-26 21:16 | ある日の読書 | Trackback

ある日の読書『寂しい生活』

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『寂しい生活』 稲垣えみ子


稲垣えみ子さんは、時々「報道ステーション」にゲストコメンテーターとして登場する、
あのアフロヘアーのかた、と云えばお分かりになるかたもいらっしゃるでしょう。

この間、久しぶりにテレビで見かけた稲垣さんは、アフロの盛り上がり具合が若干
小さくなったように感じたが、ゆるい「抜け感」オーラは相も変わらず、
世間を上の方から穏やかに俯瞰してる感じが、なんともいえず、現代の仙人を思わせるかたである。





揺るがない節電生活は、未だ持って揺るがないばかりか、
「個人的脱原発生活」と名付けて、電気と決別するような生活をしている稲垣さん。

冷蔵庫なし。洗濯機なし。
テレビもエアコンももちろんなし。

かのフランス人並みに(笑)、服は10着程度という。

外野から垣間見る稲垣さんの生活は、はなはだ「寂しい生活」に見えるに違いない。
冷蔵庫がない生活なんて、寂しすぎるというか、
「生活、成り立たないしょ」と、フツー思いますよね。

だけど、世間とは一線を画す、稲垣風アナザーワールドは、工夫と想像の世界。
非常に充実されてるのだ。



稲垣さんは、”家電は女性を解放したのか” の章で、面白いことを書いてらっしゃる。

家電はそもそも、女性の負担を軽くするためのもので、
それによって、女性の社会進出は進んだことは確かだけれど、
統計では働く女性の家事負担時間が、便利な家電のない時代とそう変わらないということは、
どういうことなんだろう。。という投げかけ。

家電が所狭しと場所をとり、モノが有り余る部屋に住む我らは
それらの管理やメンテナンスで、逆に負担増になっているのではないか。

モノに振り回されているのに、まだまだ便利なモノが足りないと云う、
満ちることのないココロ。

家電… 全然家事をラクにしてないんじゃないの!?

暮らしって、どうすれば満ち足りるの?





ごく当たり前なことに、石を投じて、考えて、気付かせてくれる人の存在は大きい。

ホントはね、そういう人がいなくても、ちゃんと自分で気付ける人でなきゃ
いけないんだけど。。








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by ukico32744 | 2017-12-20 18:00 | ある日の読書 | Trackback